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月の光 第一章  出会い

  ・・・・ガサ・ガサガサ・・・

 ふと、かすかに物音がしたような気がして、カケルは窓の方に顔を向けた。そしてそのまま、動けなくなった。

  「う、うさ・・うさうさ、うさぎ????」

机の上にある、置きっぱなしのカールのそばに、不揃いながらも何となく長い

耳を持ち、体の半分もあろうかというほど大きなまるいしっぽ、縦長のぬり

つぶしたような目、中途半端に丸いちいさな鼻、赤くて逆三角な口・・・の

何とも誰かが書いたヘタクソな絵のようなうさぎが、やはりびっくりして

動けなくなっていた。クレヨンで書きなぐったような茶色のもこもこの毛だ。

 カケルがようやく息を吐き出した時、うさぎもまたホッと体をゆるめた。

そして、カケルとカールを交互に見つめている。

  「食べたいの?」

カケルが思わず声をかけると、うさぎは両手をすり合わせてあいそ笑いを浮かべ、カケルに笑いかけた。

   「ぼくの言葉がわかるの?」

カケルはそっとベッドから起き上がると、うさぎを驚かせないようにカールの袋の中からそっとひとつ取り出すと、う
さぎの前に置いた。

カールは、うさぎの逆三角形の口には大き過ぎる大きさだったが、うさぎは
嬉しそうにひと口かじった。

 そのとたん、うっと短い両手で、ない首をかきむしって苦しみ始め、そばにあった小さなコップにさしてあったポトスをひきぬいて、中の水をごくごく飲み、大きく息をついた。どうやら、のどにつかえてしまったらしい。

   「あーー、死ぬところだった。びっくりした。はあぁーーっ」

   「し、しゃべった。しゃべれるの?」

カケルが言うと、うさぎは短い手でこぶしを作って口に当て、コホンと咳払いをした。

   「えー、私、ケルンと申しますです。私に見覚えはありませんか?」

え?こんなヘンテコなうごいてしゃべれるうさぎに見覚えがないかだって?

   「いや、知らないけど?」

カケルがそう言うと、ケルンと名乗ったうさぎは、明らかにがっかりしたように頭を垂れ、短い両手を何とか後ろにまわし、ぴょこん、ぴょこんと片足で地面をけった。

   「仕方ないですねーー、では、これをご覧下さい。」

ケルンは今度は短い両手から人差し指を立て、忍者のように上下に組み合わせると、ポンッと白い煙を残して消えた。

そしてカケルの目の前に、一枚の画用紙がハラリと現れた。

   「あ、ケル・・ン。」
画用紙の右側の下に、ケルンが描かれている。笑った顔だ。


画用紙全体に書かれた文字を見て、カケルはハッとした。

   「おてつだいけん なんでもいたします かける」

それは、カケルが去年、ユナに贈ったものだった。母の日に病院に行くので、母さんにお手伝い券を書いたら、祖母がユナにも書いたら喜ぶよ!と言ったから。母さんと同じカーネーションでは変なので、うさぎを書いてみたのだった。

今考えると、お手伝いなんてできるはずもないのに。そのときはまだ祖母の家にいたし、ユナが何を頼むっていうのだろう・・。

カケルは自分のバカさ加減に、悲しくなった。

    「思い出していただけましたか、私はあなたが書いて下さったのです。ユナさんは、あなたのこの絵を大変喜び、私を大切にして下さいました」 
 
  「えっ? ユナが?」

ケルンは、カケルの描いた絵だった。カケルは決して絵が上手いわけではないが、ユナが喜んでくれるといいなあ・・

と思いながら苦労してうさぎを描いたのだった。その時の自分の気持ちが、一瞬、鮮やかに心の中によみがえった。

そしてその絵を、ユナは大切にしてくれていたのだ。

ユナの白くて小さな顔を思い出して、カケルは胸が苦しくなった。

 ユナに会わなくなってから、どれくらいたつのだろう・・・。

カケルは、ユナを憎く思う自分に戸惑うあまり、ユナの笑顔を見ることができなくなってしまっていたのだった。 

    
  
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theme : 自作BL連載小説
genre : 小説・文学

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