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Moon Bird

  むかしむかしあるところに、お姫様がおりました。

お姫様は、ずーっとずーっとあるお城のいちばん高い塔に、ひとりぼっちで

とじこめられていたのでした。

その部屋は、お姫様がやっと寝そべることができるくらいにせまくて、高くなるほどにせまくとがって行く塔の天

井にひとつだけ窓がありました。

お姫様はいつも、その窓から聞こえてくるいろいろな音に耳を傾け、その窓

から見える、空の景色を見て過ごしました。

中でも一番好きだったのは、月を見ることでした。

月の光は、優しくキラキラとお姫様を照らし、包んでくれました。
お姫様は、日ごとに姿を変えて行く月に向かって、いろいろなことを話しました。そしていつも、こう言うのです。

 「どうか、私をここから出して下さい!」

月は、ただ優しくそんなお姫様を照らすのでした・・・。

 そうしてどれくらいの年月が経ったのでしょう。
小さかったお姫様は、まばゆいほどの美しい少女に成長しました。

 ある日、開けられることのなかった塔の扉の鍵が外され、お姫様の部屋にそのお城の王様が入ってきました。
王様の顔はひげもじゃで、見るからに悪魔と手を組んでいそうな人相でしたので、お姫様は思わず後ずさりをしました。

  「お前をここから出してやろう。そしてわしの召使いにしてやるぞ。」

王様はそう言ってお姫様を、底意地の悪そうなギラギラした目で何度も見ると
気味の悪い声で笑いながら階段を下りて行きました。

お姫様は、恐ろしくて、力が抜けて立っていられませんでした。
しばらくして、涙がほほをつたいました。後から後からとめどなく・・・。

  「やっと外に出られると思ったら、あんなイヤな顔をした王様の召使い
 なんて!それなら、死ぬまでここにいた方がずっとましだわ!」

お姫様は、青い空があかね色になり、やがて夜になってもまだ泣きつづけて
いました。

 その日は、満月でした。大きなまるい月が、高い塔の窓からお姫様を見下ろし
ました。

お姫様の目からは、ポロポロと月の色に染まった涙がこぼれ落ちて行きます。

お姫様は、涙にぬれた目でお月様に言いました。

  「お願いします!どうか私をここから出して下さい。たとえ小さなネズミ
 でもいいの。自由になりたいの!」

10回、20回、100回・・・200回・・お姫様は、その願いを繰り返し
月に向かって祈り続けました。

 すると、急にまぶしい光が高い窓から差込んでお姫様を包み込みました。

一瞬、その光の中にお姫様は消えて、次の瞬間には月の光の色をした大きな鳥に姿を変えていたのです。

月の光の色をした鳥は、まぶしく輝く翼を広げ、高い塔の窓を見上げると、
大きくはばたき、軽々とその窓をくぐりぬけて大空へ更にはばたきました。

そして一声、高く長く声を響かせると、月に向かってまっすぐに飛んで行きました。

 今でも、どこかで月の光の色をした鳥を見た人は、願いがひとつだけ叶うと
 言われているのです。


  「ねえ、もう一回読んで、ママ」

  「ユナもう夕方だよ。もうすぐごはんだからね。」

  「えーっ、もう帰っちゃうのママ」

  「うん、また明日ね。」

 カケルは母のベッドの横で、ランドセルをしょい、帰りしたくを始めた。

・・・・・・あの日から、ユナが光の世界へ旅立って行ってから、もう4年に
なろうとしていた。カケルはこの4月から5年生になる。

 あの日、母の美沙子はショックのあまりに倒れてそのまま一週間ほど眠り続けた。ユナのお通夜もお葬式も祖母と父の3人で、しめやかに行った。

 母がショックから立ち直ったら、あの月の夜、ユナとケルンとリーデと過ごした時間のことを話そう。カケルはそう思って、母が目覚めるのを待った。

  一週間が過ぎて、母の美沙子は目を開けた。

  「母さん」
  「美沙子」

 カケルと父の呼びかけに、美沙子は不思議そうに首をかしげた。

  「どうしたの?あたしは、ユナよ。へんなママとお兄ちゃん」

 何と、目覚めた後、美沙子は自分をユナだと思い込んでいたのである。

  あまりにショックが大きすぎて、事実を心の隅に追いやり、違う現実を
作り出したのだと医者は言った。

 そして心の傷が治るまで、ユナとして扱うことにしたのだ。

  そのまま、4年が過ぎた。カケルは何と、ママと呼ばれている。

姿かたちは子どもなのに、なぜ母は自分をママと呼ぶのかわからない・・。

いつまでこんな日が続くのだろう・・・カケルはあかね色の空を仰いで、唇
をかんだ。
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theme : 自作連載小説
genre : 小説・文学

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