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月の光  第3章  いのちのうた

   

    ユナも、今、幸せなんだ・・・そう思うとカケルは心が軽くなった。

  「さあ、またユナを探さなくちゃ・・・」

  「はいっ! ユナさんはどこでしょう!」

と、短い足で胸を張るケルンがおかしくて、カケルはまた大笑いしそうになるのを必死でこらえた。

 視線を、ケルンからユナが走り去った方向へ移したカケルは、はっと息を呑んだ。

 カケルの首まで伸びた黄金色の草から、大輪の花が咲いていたのだ。

それはちょうど、カケルのいる場所からてんてんと続いて一本の道ができている。

花が、ユナのいる場所を教えてくれているのだ! そう感じたカケルは、花を
たどって黄金色の草を掻き分けながら進み始めた。

 花は、カケルの頭ひとつぶん上の高さで、ヒマワリに似ている。

けれども、ひとつひとつ、色が違っていた。

いや、ひとつの花でさえ、絶えず色が変化していた。

あるものは、赤からピンク、オレンジから黄色。

またあるものは紫から青、水色から黄緑へ。

立ち止まってじっと見つめていたいのをこらえてカケルはユナを探して歩き続けた。

 しかし、ユナも相当動いているらしく、なかなかたどり着かない。

花はユナのいる道しるべとなって、次から次へ咲いて行く。

長い間歩き回って、黄金色の草原はヒマワリの花畑になった。

 気が付くと、チョウたちが花のまわりを飛んでいた。花の色のうつろいに羽の色が変化して、とてもきれいだ。

  「ユナはどこか知らない?」

チョウたちに話しかけると、それぞれがパッと花から離れ、ある方向をめざして飛び始めた。

通りすがる花の色に、羽の色を染めかえながら。

 やがてチョウたちは、はじめにカケルとケルンを黄金のじゅうたんから下ろした、大きな木へたどり着いた。

  「ここ・・なの?」

チョウは、ふわりと上へ上へカケルの視線を導く・・・すると木の枝にすわったユナが、手を振っているのが見えた。

  「カケルさあぁーーん、待ってくださいよお! おうわぁー!」

ケルンはつまずきかけた所をチョウたちに支えられ、そのまま木の枝にいるユナの元へ運ばれていった。

  「お兄ちゃんも、早く登ってきて!」

また、とびっきりの笑顔でユナが手を振る。

木の幹に手をかけると、また黄金色の草がするすると伸びて、あっという間に
ユナのいる枝に着いた。

  「ありがとう」

カケルが元に戻ろうとする草をそっと握ると、黄金色の草は一瞬、ほうっと
あたたかく光った。

カケルの心も、ほうっとあたたかくなった。


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月の光  第2章  ユナ

  

    「あたしね、お月様の世界でお兄ちゃんと遊びたいって、いつも思っていたのよ」

ユナは、カケルを振り返って、笑顔で言った。

    「かけっこ、おもしろかったね。風みたいにビューンって気持ちよかったあ!」

    「うん。またやろうよ。今度はボクが逃げるよ。絶対つかまらないからね!」 
    
    「だあめっ! 今度もユナが逃げるの!」

    「何だって! よっしゃ、先に降りた方が逃げるぞー!」

 カケルは何だかムキになってシャボン玉の中で立ち上がり、ジャンプしたり、天井を引っかいたりし始めた。

     「わあーー、ダメですよぅカケルさん、落ちたらどうするんですかあ!」

ケルンがあわてて、短い手をぐるぐる回している。

カケルはかまわずに今度は足元をつまみ始めた。

やがて小さな穴が開き、カケルは小さく「やった!」と言いながら、更に穴を広げて行く。

きっと、光たちと黄金色の草が自分を受け止めてくれる! 
カケルはそう信じて、穴の開いたシャボン玉から、目をつぶって飛び降りた。

 すると、するすると下から黄金色の草が伸びてきて、カケルの背中をふわりと受け止めた。

そしてそのまますべり台となって、らせんを描きながらカケルは地面まですべって行く・・・・と、目の前にもうひとつのすべり台がふいに現れ、ユナがカケルよりもはるかに早くすべり降りて行った。

     「お先にーーー!!」

     「ユナ! ずるいぞ!!」

 ユナはけらけら笑いながら大地に降りると、あっという間に黄金色の草の中に消えて行った。

 ったく、ユナの奴・・・。カケルがぶつぶつ言いながらすべり降りると、はるか上の方からケルンの声がし

て・・・・ふわん!とカケルの足にぶつかった。ケルンは両方の目をバツ印にしながらひっくり返っている。

     「どいて下さいって言ったじゃないですかあ!」

     「ごめんごめん。」

そう言いながら、ケルンの顔がおかしくてカケルはぷっと吹き出してげらげら
笑い出した。

     「ひどいですよーー、何で笑うんですかー!」

今度は、大きなバツ印の顔になってケルンが怒ると、それもまたおかしくて

カケルは体を前に折り曲げて、ますます笑った。

 こんなに笑ったのは、生まれて初めてかもしれない。

笑うことすら、カケルは忘れていたような気がする。

ユナのことで両親は頭がいっぱいで、そんな両親のつらい顔ばかりをカケルは見て過ごしてきたのだから・・・。

     「あ、ああ、ごめんごめんケルンはあーーーおかしかった」

     「ところで、ユナさんはどこへ行ったんでしょうね。」

     「そ、そうなんだ。ユナの奴めどこに行ったんだ?」

 カケルは気を取り直して深呼吸した。

月の光が、スーーッと体の中に入ってくる。心の奥にしん、と届いた光が、カケルの体中に行き渡る。

嬉しい、とカケルは感じた。ここにこうしていることが、とても嬉しい。

この瞬間、ユナを好きだと心から思っている自分が。素直な自分が。

そしてユナと同じように笑顔になっている自分に気がついた。 

ユナも、幸せなんだ・・カケルはまた月の光を深呼吸した。

theme : 自作BL連載小説
genre : 小説・文学

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月の光 第2章  ユナ


   ユナの背中を追いかけていると、突然黄金色の草がカケルの首のあたりまで伸びてきた。

見ると、またはるか向こうまで波のように草の海は続いて行った。

  「うわぁ!」

 と声をあげたのはケルンで、草のてっぺんでジタバタしている。

カケルは、黄金色の草をかき分けかき分け、ケルンの方へ行こうとした。

 ところがケルンは、本人の意思とは関係なく、草のてっぺんをジャンプしながら遠ざかって行く。

 「どうなってるんだ?」

 「カ、ケ、ルさー、んた、す、け、てえーーー!」

ケルンの姿が、現れては消えて行く。

ふと、黄金色の草からぽわぽわとまた、ホタルのような光が生まれた。

そして、カケルのまわりでくるくるとゆっくり、または早く動いていた。

 「そうだ、ユナをつかまえなくちゃ!」

カケルが独り言を言うと、ホタルのような光たちは、こっちへおいでと言うよ
うに、先へ集まってくるくる回った。

そちらへ草をかき分けて進むと、また光たちが先へ進む。

やがて、ケルンを抱いてうずくまっているユナを発見した。

  「あーっ、見つかっちゃった!」

ユナは、そのまま転がってケラケラ笑った。光たちも、重なり合い、くるくる
回りながら、2人を優しく囲んでいた。

  「うわぁーーーっ!」

 また、ケルンが突然叫ぶ。何と今度は、ケルンをすっぽり包んだシャボン玉が宙に浮き、ゆっくりと空へ上り始めた。 

 「あーっ、ずるいケルン! あたしも乗せて!」

ユナが光たちに言うと、あっという間にユナを乗せたシャボン玉が、宙に浮いた。

 「おい、ユナ!」

と慌てるカケルもまた、シャボン玉の中にいた。

月の光が、空に浮かんだ3人を黄金色に染める。


いつの間にかユナを乗せたシャボン玉が、カケルの横に並んでいた。

ユナもまた、月を見つめていた。

  「あたしね、病院の窓から見えるお月様を見るのが好きだったの。お日様
 はまぶしすぎて見ていられないけど、お月様ならずっと見ていられるから。
 一番好きなのは、やっぱり満月よ!」

カケルの目に、毎日月を見つめるユナの姿が写った。毎日、どんな思いで見つめていたのだろう・・・。

月を見つめているユナを、カケルはそっと見続けた。

theme : 自作BL連載小説
genre : 小説・文学

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月の光 第2章  ユナ

  
   チョウたちは、どんどん地上に向かって降りて行く。

やがて、やや緊張ぎみのカケルとケルンをのせた黄金色のじゅうたんは、大きな木の根元に、ふわりと止まった。

  「着きましたよ、カケルさん」

 そこは、一度遠足で来たことのある大きな公園の中にある、芝生の広場だった。

 そして・・・ユナがそこにいた。

ユナの横には、背中まである長い髪に、白い、ひざまでの丈のドレスを着た女の人が立っていた。

ユナそっくりな、あたたかくてふわりとした笑顔だ。

  「こんばんは、カケル。私はリーデ。ユナの・・古い友だち・・かな?
 よく来てくれたわ。」

古い友だちって何だよ・・そう思った時、ユナがとびきりの笑顔ですぐそば
までかけよってきた。

  「来てくれてありがとう、お兄ちゃん。会いたかったのよ、すごく!」

カケルは、返す言葉が見つからなくてしきりに頭をかいた。

  「あ、う・・うん。ユナ、でも大丈夫なの? 外に出たりして」

ここにいるユナは、病院で見たユナとは全く違う。まるで・・・。

まるで病気じゃないみたいだ。

  「病気なのは、体なの。ユナの心はとっても元気よ。だから、心配しな
 いで。」

リーデがかわりに答えた。カケルは、自分の肉体はベッドに寝ていたことを
思い出して、何となくわかったような気がした。

  「ケルンも、ありがとう! お兄ちゃんをつれてきてくれて!」

ユナが声をかけるとケルンはふにゃあ、と笑ってユナの腕の中に飛び込んだ。 

 「あ、お手伝い券・・」

カケルがそう言うと、ケルンはポムッと画用紙のお手伝い券に戻った。

  「ありがとう、お兄ちゃん。これはあたしの宝物よ!」

  「で、何を頼みたいの? ボクに。」

するとユナは、またとびきりの笑顔になった。

  「遊んでほしいの。あたしと。ここで。」

そばにいたリーデが、ユナの両方の肩に手を置いた。

  「お兄ちゃんと、一度でいいから遊びたいっていうのが、ユナの願いだっ
 たのよ。」

  「そう・・。」

カケルは、胸がギュッと苦しくなった。

 カケルのまわりで、チョウたちがふわりふわりと舞っていた。

月の光の粉がホタルのように淡く光って落ちて行く。

 すると、落ちた地面がぼうっと光り始めた。あっちもこっちも、波のように

光がはるか彼方まで広がって行く。あたりはまるで、カケルたちが乗ってきた
黄金色のじゅうたんのようになった。

  「わあぁー、明るい!お月様の国に来たみたい!」

白にピンクの小さな花がたくさんプリントされたワンピースを着たユナは、
いきなりカケルの手をとって駆け出した。

  「ユ・ユナ・・・」

あわてて走り出すと、ユナはカケルの手を放し、更に遠くまで走って行った。

2人が走ると、光がふわりとはじけた。

ユナの手から離れた「お手伝い券」が、くるくる回ってケルンに戻り、あた
ふたと2人の後を追う。


  

theme : 自作BL連載小説
genre : 小説・文学

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