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月の光 第一章  出会い

    
   月は、だんだん大きくなって行く。

その黄金色の輝きは、カケルのすべてをきらきらと照らしている。

何だか心の奥が、炭酸の入ったジュースの泡のように、ピチピチとはじけて
いるような気がした。

何故だろう・・とてもなつかしくて、とてもうれしい。

遠い日に、母さんの腕の中で感じていたなつかしい思いが、カケルの胸によみがえった。

そしてそれは、小さな痛みとなって通り過ぎて行く。

カケルにとって、ユナは一体何なのだろう。

かわいい妹? それとも・・・。

それまで、ずっと避け続けてきた事に、今真正面から向き合おうとしている。

カケルは、思わずため息をつき、それから目の前の大きな月を見つめながら、大きく深呼吸した。

 本当は、ユナのことを嫌いじゃない。嫌いだと思ってしまう、自分が嫌い
なのだ。

 ユナに会おう! 会ってみよう! 自分だって、このままじゃ嫌だ。

カケルは、ようやく決心がつき、もう一度月の光の中で深呼吸した。

 月に向かって飛んでいたチョウたちは、やがて地上に向かって高度を下げた

  「もうすぐですよ」

それまで黙っていたケルンが、カケルに声をかけた。



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theme : 自作BL連載小説
genre : 小説・文学

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月の光  第一章 出会い

   やがてカケルの部屋は、何百というチョウでいっぱいになった。

  ユナが描いたチョウかあ・・・。

どのチョウも、きれいに描かれていて、ていねいに色をぬられている。

ユナの心がすべてのチョウにこめられているのがわかる。

月の光の中を飛んできたチョウたちは、月の黄金色の光の色も羽にまとって

いた。

じっと見ていると親しげであたたかで明るくて・・どこか、ユナの笑顔のようだった。

  「さあ、行きますよカケルさん」

ケルンが言うと、チョウたちは静かにその場でゆっくりとはばたき始めた。

すると、その羽にまとった月の光が、金の粉になってあたりに降り注いだ。

カケルのまわりのすべてが、黄金色になって・・・。
 

 次の瞬間、カケルは空を飛んでいた! まっすぐに満月に向かって。

ふと自分の部屋を見やると、自分がベッドで毛布にくるまって寝ている!

  「気が付きましたか、カケルさん。びっくりしなくていいですよ、ベッド

 に寝ているのは、肉体のカケルさん。ここにいるのは本物のカケルさん。」

何だ何だ? 肉体のボク? 本物のボク? 一体何がどうなっているのだ?

  「本物というのは、心のことですよ。この世界では、肉体を持たないと

 生きて行けませんから。」

  「じゃあ、じゃあボクは死んだの?」

  「いいえ、一時的に体から抜けてもらっただけですから、ご心配なく。

 ちゃんと帰してさしあげますから、どうか心配しないでついてきて下さい」

カケルは、ホッとしたような、とんでもないことになったと不安にならなければならないような、わけがわからない気

持ちでケルンを見た。

ケルンは、黙って月を指差した。

 チョウたちが、カケルの部屋にやって来たのと同じように、たくさんの列を

なして飛んでいた。カケルとケルンの周りには黄金色の光の粉が取り巻いてい

て、まるで金の糸で織られたじゅうたんに乗っているようだった。
 


  

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月の光  第一章 出会い

   
 あのお手伝い券を渡した日から、一体どれくらい日にちが経ったのだろう。

幼稚園児だったカケルは、小学生になった。

何だかんだと理由をつけて、ユナのお見舞いに行くことを拒んできた。

その間、どれくらいユナは、あんな苦しい思いをしたのだろう。

会いたいというのなら、会ってやればよかった・・・。

カケルは、初めて会いに行かなかったことを後悔していた。

  「本当に、ボクに会いたがっているの?」

するとケルンは、地面に激突するような勢いでうなづいた。

  「はいっ!それはもう! では、会って下さるのですね!」

  「うん・・今度の土曜日でいいかな?」

  「いいえ、今すぐです!」

ケルンは、嬉しそうに短い足でピョンピョン跳ねながら言った。

  「えっ、でも、もう夜だよ。母さんたちもさっき帰ってきたばかりだし」

カケルがとまどっていると、ケルンは自信たっぷりに言った。

  「わたしが、ユナさんが待っているところへご案内します!」

  「ユナが待ってるって・・?」

ケルンは得意そうに胸を張った姿勢のまま、こう告げた。

  「はい! まずは、ベッドに寝てください、カケルさん。そして、そう

 ですねえ、風邪をひかないように、毛布をかぶってください。」

  「何で、出かけるのにベッドに寝るのさ!」

  
「私の言うとおりにしてくだされぱ、すぐにわかります」

カケルは、わけがわからないままベッドに横になり、しぶしぶ毛布を首まで

引き上げた。

ベッドに寝たまま、移動でもするのか・・・?

  「それでは、ご案内します」

ケルンは、どこからか取り出した銀のフルートを、三角の口にあてて吹き始めた。

 それは、高く高く澄んだ音で、月の光の色によく似合っていた。

 すると、どこからともなく、色とりどりのチョウが一列に並んでひらひらと

現れた。あちらからも、こちらからも、それは何百という数になった。

よく見ると、どれもこれも画用紙に描かれた絵だった。

そして、ケルンよりはずっとていねいにぬられている

  「このチョウたちは、ユナさんが描いたものです。カケルさんをどうやっ てお連れするか、ユナさんは一生懸命

考えて、そしてたくさんたくさん描い たのですよ。」

ケルンは、チョウたちを満足そうに眺めながら言った。

  

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月の光 第一章  出会い

  ケルンの強い意志を感じたカケルは、唇をかんで視線を空に移した。

黄金色の月の光が、カケルをすっぽりと包み込む。

息をするたびに、月の光が心の中に降り積もって行く・・そんな感じで

カケルの心はあたたかい黄金色に、少しずつ輝いて行くのだった。

 ふいに、目の前にカケルがユナに贈った「お手伝い券」が現れた。

そして手をのばして受け取ったのは・・・ユナだった。

白く透き通った顔が、パッと明るく輝いた。

  「お兄ちゃんが描いてくれたの?ユナに? かわいいうさぎさんだあ!

 これ、何て読むの?」
  「おてつだいけん なんでもいたします かける 」

母さんが、一文字ずつ指を差しながら読む。

  「か け る そうだ、うさぎさんの名前は、ケルンにする。お兄ちゃん

 が描いてくれたうさぎさんだから。いいでしょ、ママ」

  「はいはい。よかったわね、ユナ。」

母さんは、泣きながらユナの頭をなでた。

ユナは、うれしそうにお手伝い券のケルンをずーっと見つめていた。
 
 あの日、病室に行くとユナは眠っていた。カケルは、顔を合わせずにすんで

いくらかホッとしたのを覚えている。

くるくる巻いてリボンをかけたのを母さんに渡すと、さっさと祖母の手を引っ張って家に帰ったのだった。

 そうか、あんなに喜んでくれたのか・・・それなのに自分は・・。

カケルはまた胸が苦しくなって、ため息をついてうなだれた。

  「ねえ、ケルン」

ユナの声がする。

  「お兄ちゃん、また来てくれるよね。また会えるよね。元気になったら
 ユナねー・・・」

そこで声は途切れ、ハッとして顔を上げたカケルの目に、苦しそうに胸を押さえるユナの姿が映った。

  「ユナ!しっかりして、ユナ!」

ナースコールのボタンを押しながら、母さんが叫んでいた。

ユナ・・カケルは不安になった。苦しそうに胸を押さえるユナを初めて見た。ユナはいつも、あんなに苦しい思いをしているの?

  「行きましょう、カケルさん。ユナさんは、あの日からずっとずっと
 あなたを待っているのです。」

カケルは、ふーっと息を吐き出し、そしてケルンを見た。 
 

 

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月の光 第一章  出会い

  ・・・・ガサ・ガサガサ・・・

 ふと、かすかに物音がしたような気がして、カケルは窓の方に顔を向けた。そしてそのまま、動けなくなった。

  「う、うさ・・うさうさ、うさぎ????」

机の上にある、置きっぱなしのカールのそばに、不揃いながらも何となく長い

耳を持ち、体の半分もあろうかというほど大きなまるいしっぽ、縦長のぬり

つぶしたような目、中途半端に丸いちいさな鼻、赤くて逆三角な口・・・の

何とも誰かが書いたヘタクソな絵のようなうさぎが、やはりびっくりして

動けなくなっていた。クレヨンで書きなぐったような茶色のもこもこの毛だ。

 カケルがようやく息を吐き出した時、うさぎもまたホッと体をゆるめた。

そして、カケルとカールを交互に見つめている。

  「食べたいの?」

カケルが思わず声をかけると、うさぎは両手をすり合わせてあいそ笑いを浮かべ、カケルに笑いかけた。

   「ぼくの言葉がわかるの?」

カケルはそっとベッドから起き上がると、うさぎを驚かせないようにカールの袋の中からそっとひとつ取り出すと、う
さぎの前に置いた。

カールは、うさぎの逆三角形の口には大き過ぎる大きさだったが、うさぎは
嬉しそうにひと口かじった。

 そのとたん、うっと短い両手で、ない首をかきむしって苦しみ始め、そばにあった小さなコップにさしてあったポトスをひきぬいて、中の水をごくごく飲み、大きく息をついた。どうやら、のどにつかえてしまったらしい。

   「あーー、死ぬところだった。びっくりした。はあぁーーっ」

   「し、しゃべった。しゃべれるの?」

カケルが言うと、うさぎは短い手でこぶしを作って口に当て、コホンと咳払いをした。

   「えー、私、ケルンと申しますです。私に見覚えはありませんか?」

え?こんなヘンテコなうごいてしゃべれるうさぎに見覚えがないかだって?

   「いや、知らないけど?」

カケルがそう言うと、ケルンと名乗ったうさぎは、明らかにがっかりしたように頭を垂れ、短い両手を何とか後ろにまわし、ぴょこん、ぴょこんと片足で地面をけった。

   「仕方ないですねーー、では、これをご覧下さい。」

ケルンは今度は短い両手から人差し指を立て、忍者のように上下に組み合わせると、ポンッと白い煙を残して消えた。

そしてカケルの目の前に、一枚の画用紙がハラリと現れた。

   「あ、ケル・・ン。」
画用紙の右側の下に、ケルンが描かれている。笑った顔だ。


画用紙全体に書かれた文字を見て、カケルはハッとした。

   「おてつだいけん なんでもいたします かける」

それは、カケルが去年、ユナに贈ったものだった。母の日に病院に行くので、母さんにお手伝い券を書いたら、祖母がユナにも書いたら喜ぶよ!と言ったから。母さんと同じカーネーションでは変なので、うさぎを書いてみたのだった。

今考えると、お手伝いなんてできるはずもないのに。そのときはまだ祖母の家にいたし、ユナが何を頼むっていうのだろう・・。

カケルは自分のバカさ加減に、悲しくなった。

    「思い出していただけましたか、私はあなたが書いて下さったのです。ユナさんは、あなたのこの絵を大変喜び、私を大切にして下さいました」 
 
  「えっ? ユナが?」

ケルンは、カケルの描いた絵だった。カケルは決して絵が上手いわけではないが、ユナが喜んでくれるといいなあ・・

と思いながら苦労してうさぎを描いたのだった。その時の自分の気持ちが、一瞬、鮮やかに心の中によみがえった。

そしてその絵を、ユナは大切にしてくれていたのだ。

ユナの白くて小さな顔を思い出して、カケルは胸が苦しくなった。

 ユナに会わなくなってから、どれくらいたつのだろう・・・。

カケルは、ユナを憎く思う自分に戸惑うあまり、ユナの笑顔を見ることができなくなってしまっていたのだった。 

    
  

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月の光  第一章  出会い

     やわらかな月の光が窓から差し込んでいた。

カケルはベットに寝転んで 部屋の天井をじっと見つめていた。

窓辺に向かって置いてある机は、まだ新しい。

カケルが小学校に入学してから約半年が経とうとしていた。

 「ふーーっ・・・」

カケルは部屋の電気もつけないまま、月の光を避けるように寝返りを打った。

おやつのカールの袋も、机の上に置き去られ、カールおじさんの顔が月影の
中であやしくゆがんでいた・・・。

 下の階からは、父と母の話す声がずっと絶え間なく聞こえていた。

  「ユナは・・・・・ユナが・・・・・」

カケルはその名前が聞こえる度に、小さく頭を振った。

 
 ユナは、カケルの2つ下の妹だ。心臓が悪く、生まれてからずっと病院に
入院したままだった。

 ユナが生まれるまで、カケルはずっと母さんの腕の中にいて、

あたたかい 笑顔と声に包まれていた。優しい歌とやわらかな頬が、いつもそばにあった。

 それが、ある日突然、悲しみという影に覆われてしまった。

母さんはショックのあまり、長い間入院してしまうし、父さんはユナにつきっ きりになった。

カケルは、わけがわからないまま祖母の家に引き取られ、小学校に入学すると同時に、またこの家に戻ってきたのだった。

 ・・・・・どうして自分だけ、こんな目にあうんだろう。

どこかポッカリと穴が空いてしまったような心を、カケルはいつも悲しい思い で見つめていた。

そしてそれは、ユナへの憎しみにも似た感情を呼び寄せる。

  (いなくなればいいのに・・)

何度そう思っただろう。そして幾度そう思ったことを後悔しただろう。

カケルがまだ小さい時は、よく祖母に連れられてユナに会いに行ったものだ。

ユナは、いつもカケルに会うと喜んでくれた。2つに結んだ茶色の髪、透き通るほど白い顔と手。小さな体。

目を閉じると、そのまま遠くに行ってしまいそうで不安になる。

カケルにとってユナは、大好きで、大嫌いな存在だった

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はじめまして。

   はじめまして。 

   ありすです。

   こちらでは、主に私の小説を書き綴って行きたいと思っています。

   もしもお気に召しましたら、この先も足をお運び下さいね。

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